電動アシスト自転車の人気が止まらない!自転車市場における日本電動アシスト自転車の位置づけはどのようになっているのでしょうか。今回は日本電動アシスト自転車の市場にについて紹介します。
独り勝ちの国産電動アシスト自転車
みなさんは、どんな自転車に乗っていますか、または買いたいと思っているでしょうか。
最近人気を高めているロードバイクやクロスバイク、マウンテンバイクなどのスポーツバイクや便利な折り畳み自転車などは、ヨーロッパなどの海外製が目につきます。
高級な海外ブランド製のバイクも人気です。
これに対し、以前からあるシティサイクル、いわゆるママチャリはホームセンターや家電量販店、ディスカウントストアなどで1万円を切るような低価格で販売されているケースが少なくありません。
国内メーカーのブランドが付いていても、製造は中国など、海外でコストを抑えて製造されているものが増えています。
では、子供の送り迎えをするパパやママを中心に人気を集めている電動アシスト自転車はどうでしょうか。
初めて日本で電動アシスト自転車を開発したメーカーを中心に、大手の日本メーカーがしのぎを削っていますが、海外メーカーや輸入品は一切見られません。
日本の自転車市場において、電動アシスト自転車に関しては日本産が100%といった状態でした。
法制度が影響
電動アシスト自転車はモーターが付いているため、本来は自転車には分類できず、原付バイクと同様に免許が必要となり、ヘルメットの着用や自賠責保険への加入が求められるはずです。
ですが、実際にはあくまでも自転車であり、免許もヘルメットも自賠責保険加入も必要ありません。
なぜなら、電動アシスト自転車は道路交通法において自転車の一種と規定されているためです。
その代わりとして、モーターである電動機で勝手に自走できない仕様であることが求められます。
電動機作動するのは、ペダルに力がかかった時だけです。
電動アシスト自転車が発売された当初は、ペダルに加えた力と同じ力までしかアシストできないとされていましたが、2008年12月に規制が緩和され、現在では加えた力の2倍までのアシストが可能です。
また、日本の電動アシスト自転車には速度規制も適用されます。
時速10kmを超えるとアシスト力が弱まり、24kmを超えるとアシスト力なしの状態にしなくてはなりません。
これによって道路交通法上、自転車として扱われているのです。
中国では日本で電動アシスト自転車が発売され、話題を集めていたことで、電動自転車の製造に積極的に取り組むようになりました。
中国製の電動自転車とはボタン一つでモーターが回転し、アシスト力の制限もありません。
つまり、ボタン一つで自走する電動自転車です。
中国での生産台数は1,000万台を超え、世界各地に輸出されるようになり、スポーツバイクなどの自転車文化が醸成されているヨーロッパでも人気です。
中国産の製品は日本にもどんどん輸入され、シティサイクルのように価格下落にも影響を与えてきました。
ですが、電動アシスト自転車の市場に関しては、中国をはじめ、自転車の参入は今のところありません。
なぜなら、中国製はアシスト力の制限なしにモーターで自走できるため、日本の道路交通法上の自転車としては流通できないためです。
そのため、日本の自転車市場では日本メーカーの電動アシスト自転車が独り勝ちです。
一方、輸出となると、制約が多い日本の電動アシスト自転車より、中国製の無制限の電動自転車のほうがニーズが高く、ふるっていません。
日本における電動アシスト自転車のシェア拡大
電動アシスト車が発売されたのは、1993年と今から30年ほど前です。
当初は従来のシティサイクルに比べて高い価格帯と、アシスト力の制約が高かったことから、販売に苦戦していました。
ですが、法規制の改正などに伴い、需要がどんどん増えていき、2009年には50cc原付バイクの販売台数を上回っています。
さらに、2018年になると、シティサイクルの販売台数も上回る勢いまで、シェアを拡大してきました。
当初は子育て世代にとって重い子供を乗せて走るのをサポートしてくれる救世主として重宝されましたが、次第にレンタサイクルやシェアサイクルとしての利用が増え、さらに自転車を使った宅配業務用など使われる場面も拡大しています。
近年では学生の通学用としても需要を増やしてきました。
日本市場における電動アシスト車は販売数量を伸ばしてきただけでなく、発売当初は躊躇されていた高い価格帯すらネックにはならなくなっています。
すなわち、販売単価も上昇しているのです。
法規制などが本格化する前の2007年においては1台あたり4.9万円であった販売単価が、2020年には8.4万円まで上昇しました。
また、2007年以降の自転車ジャンルごとの比較でも、シティサイクルをはじめ、マウンテンバイクやミニサイクル、子供車はいずれも販売数量を減少させています。
販売金額で比べると、シティサイクルは減少し、マウンテンバイクやミニサイクル、子供車は横ばいとなっています。
これに対して、電動アシスト自転車は販売数量も販売金額も上昇させてきました。
その結果、国内における自転車の生産量は、電動アシスト自転車が78%と8割近くを占めている状況です。
日本の電動アシスト自転車メーカーや、その歴史についての記事はこちら
電動アシスト自転車が右肩上がりにシェアを伸ばしてきた背景
電動アシスト自転車が日本市場において勢力を伸ばしてきたのは、2007年~2009年前後が転換点になっています。
この時期、電動アシスト自転車に関する法規制の緩和などが行われ、この制度改正が電動アシスト自転車の需要が高まる契機となっています。
2008年にはアシスト力の規制緩和が行われ、2009年7月以降は子供を2人乗せて走行できるタイプの電動アシスト自転車がリリースされたことから、子育て世代の需要を一気に引き上げました。
これにより、2009年には原付バイクの販売台数を上回る結果となったのです。
2009年7月の子供2人乗せ電動アシスト自転車販売に至るまでには、国をあげての大きな議論が行われていました。
電動アシスト自転車に限らず、前と後ろに子供を乗せた自転車が横転し、自動車に轢かれるなどの死傷事故が増え、政府が規制をかけようとしたからです。
ですが、子育て世帯から反対意見が出され、幼い子供を2人持つ親からは、法規制されたら送り迎えに支障が出ると多くの声が出されました。
2007年から警察庁で検討懇談会がスタートし、2008年に警察庁が6歳未満の幼児を持つ親3,000名にアンケート調査を行ったところ、幼児2人同乗を認めてほしいとの意見が3割を超えました。
議論の末、2009年7月に幼児2人同乗自転車に関する都道府県条例が改正されたのです。
一定の安全対策を講じることを前提に幼児2人乗りが許容されたことから、日本の電動アシスト自転車メーカーは、それぞれが新しい規則に則った、幼児同乗対応の電動アシスト自転車をリリースしました。
子供の数に対応した子供1人同乗または2人同乗の別や、チャイルドシートが前に付いたタイプと後ろに付いたタイプなどさまざまなタイプが誕生しています。
幼児同乗対応の電動アシスト自転車はチャイルドシート込みの価格で、12万円~15万円とこれまで以上に高額な価格帯でしたが、子育て世代から大きな支持を集めました。
電動アシスト自転車は今でも、子育て世代には需要の高いアイテムです。
これに加えて、地球温暖化防止のために自転車通勤を始める方が増え、コロナ禍で満員電車を避けて自転車通勤を始める人、おうち時間で運動不足に陥った方のサイクリングツールとしても人気を高めています。
そのため、コロナショック以降も、売上を大きく落とすことはありません。
日本の自転車市場で大きな割合を占める日本メーカーの電動アシスト自転車
日本電動アシスト自転車は道路交通法などの法規制といった特殊な事情もあり、海外製品が入り込む余地がなく、独り勝ち状態です。もちろん現在多くの海外メーカーが製品を出しきていますが、市場のシェアがまだまだほんの一部しか展開できていない現状です。
幼児2人同乗が認められたこともあり、それに対応する電動アシスト自転車が子育て世代から大きな支持を集め、販売台数も販売単価も右肩上がりを続けています。
エコブームやコロナによる密の回避などもあり、新たな需要も取り込みながら、日本の自転車市場におけるシェアを拡大し続けています。
※数値参考URL
https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/hitokoto_kako/20210728hitokoto.html
https://sts.kahaku.go.jp/diversity/document/system/pdf/121.pdf
http://www.jbpi.or.jp/statistics_pdf/pdexim_202207.pdf
https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/report/07001112/europe_electric_bicycle.pdf